どれもこれもおすすめできる傑作ぞろい!米澤穂信せんせーい![後編]

みなさん、カリメーラ。どうも、寒河です。

今回は前編に続き、後編を書きます。

前編をまだご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

ミステリ初心者にもおすすめ!米澤穂信せんせーい![前編]

その他、こちらの記事もおすすめです。

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さて今回は、全部で6つの米澤穂信作品をご紹介したいと思います。

 

『折れた竜骨』

ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。

自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?

引用:『折れた竜骨』 – 東京創元社

みなさんは魔法の使えるファンタジー世界に行ったら何がしたいですか?

(ちなみに僕は空を飛びたい。でもファンタジーゲームでも空飛ぶ魔法ってあまり見たことないですよね。魔法でも無理なのか……。

いや、アイアンマンのスーツを作ればいいんじゃない?まだ現実味はある?

ないよね。知ってました)

 

閑話休題(ピヨッピヨッ????)

 

日本推理作家協会賞受賞作!

魔法のある世界でのファンタジーミステリです。

(ファンタジー世界でのミステリって今でも珍しいんじゃないかな?異世界転生はすごい流行ってるけど。あれは自分の思ったように世界の設定を作れるから人気なのか?)

「魔法ありだったら、なんでもできるじゃん」とお思いでしょう。証拠隠滅、記憶改竄など、なんだってできそうですし。

しかし、そこはさすが米澤先生ですね。ちゃんと論理を組み立て、ミステリとして成立させています。

しかもこの物語の舞台は中世のイギリスですので、文化、思想、技術などは現在と多く異なります。

魔法のある中世イギリスの世界観を描きつつ、現代の人が世界観をすんなりと受け入れられるようにも書かなければならない(脱帽とはこのことか!?)

 

アリバイ確認。証言集め。現場検証。やっていることは現実世界でのミステリとそう変わらないです。

容疑者のボロを探すというよりも、ひたすら論理的に魔法等の存在も考慮しつつ容疑者を絞っていきます。

物語のクライマックスで、犯人を特定していくのですが、1つ1つ推理をしていくその流れで「え、まさかまさか!犯人って……」というラストに繋がります。

(1つわかりやすい伏線がありましたし、犯人が誰か想像しながら読んでみてください。楽しいですわよ。僕は深読みしすぎて、間違えました。

深読みと言えば、前に親の料理の手伝いをしていて、具材から「ポトフを作るのかな」と想像して勝手に作ってたら、答えはまさかのカレー!みたいなことがありました。キャベツはブラフでとりあえず買ってただけとか笑、騙されましたね。確認しなかった僕が悪いんですが)

 

上下巻構成ですが、ダレることなくストーリーは進んでいきますので、ボリュームにビビることなく読んで欲しいです。

ぜひ読んでね!

 

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『儚い羊たちの祝宴』

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

引用:『儚い羊たちの祝宴』 – 新潮社

今まで紹介してきた米澤穂信作品とは、だいぶ毛色が違います。

構成は短編集となっています。

ホラー風味の作品から(ホラーと言っても、お化けではなく人間がホラー)、巧みに伏線を回収したミステリ、など様々な”テイスト”の5つの短編を楽しめます。

ガッチガチのミステリではないですけど(どう思うかは人による)、とても面白いです。

いろんな人が、最も短編として構成がしっかりしていて秀逸な短編は「玉野五十鈴の誉れ」と言っています。僕もそう思います。(個人的に好きなのは「儚い羊たちの晩餐」)

 

この小説を僕は最初に読んだとき、「怖っ!え、そんな思惑あったの?怖っ!」と思ったものでした。

(ガクガクブルブルと震えましたね。僕、ホラー苦手だもん!

……誇って言うことではないな。でも、お化けとかゴーストとか幽霊とかグロとかホント無理。

彼女とかとお化け屋敷行ったら、彼女放って1人で泣き喚いてるまである。女性のみなさん、彼氏選ぶなら、ホラー得意な人を選びなよ!これ必須!財力より必須!お化け屋敷で保身に走る男選んじゃダメよ!)

……関係ない話を長々とすみません。

 

さて、この作品の1番の特徴と言えば、それぞれの短編のラストあたりで真実がわかるように文章が書かれていることですね。この技術はフィニッシングストロークと言うらしいです。最後の1文で衝撃の真実が明かされる!みたいな。

で、そこで明かされる真実がもうえげつない。最初にも言ったけど怖い、人間が怖い。クマの子に「人間なんてロクなもんじゃない」と教えてあげたいぐらい。

 

これからの米澤穂信作品に通ずる基盤を作った作品と言えますね。

面白きことお化け屋敷の如し。お化けは出てこないから、安心してね!

文章が読みやすいから、怖いけど物語はスイスイと進んでしまいます。

「怖いのは、そう……、人間なのだ」(夏目漱石の「こころ」でも、なんかこんなこと言ってた気がする。鋳型に入れた人間がどうたらこうたら)

ぜひ読んでねーい!

 

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『さよなら妖精』

1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。

引用:『さよなら妖精』 – 東京創元社

米澤穂信の名を広めるきっかけになった作品でして、僕が米澤穂信作品の中で最も好きな作品です。

この作品は米澤穂信先生が得意とする「日常の謎」を中心としたミステリです。

しかし物語の最後に「日常の謎」であるものの、一介の高校生にはどうすることもできないような結末に繋がる謎を解くことになります。

  • ユーゴスラヴィアから来た少女、マーヤ
  • 語り手、守屋道行
  • 守屋の友人、太刀洗万智
  • 守屋の友人、白河いずる
  • 守屋の友人、文原竹彦

が中心となって物語は進みます。

物語が進むにつれ、守屋の中でマーヤへの憧れと、「日常の外」にあるマーヤが生きる異国の地への憧れが膨らんでいきます。

その思いをマーヤに伝えるのですが……。

読んでてホントに守屋の心情が伝わってきて……、つらいです。

 

少女と少年の物語という青春物語に、ミステリの額縁を与え、異国の紛争問題を取り上げて色付けすると、ここまで面白くなるのか!と唸りました。

下手な青春物語は薄っぺらく、軽く、さらっさらなんですが、「さよなら妖精」は厚く、重く、粘りけがあるんですよね。

 

ところで謎があれば答え合わせもあるわけで、物語のラストで切ない答えが明かされます。

  1. 青春物語として秀逸
  2. ミステリとして秀逸
  3. もうとにかく秀逸

極上の青春ミステリをご賞味ください。

ぜひ読んで!

 

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『真実の10メートル手前』

滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執──痛みを引き受けながらそれらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の六編を収録する垂涎の作品集。

引用:『真実の10メートル手前』 – 東京創元社

こちらの都合上こちらの紹介は簡略化します。

「さよなら妖精」の太刀洗万智の成長物語という風に僕は捉えています。

太刀洗万智のジャーナリストとしての悩み、覚悟、考えが6つの短編を通して書かれます。

僕が最も良いと思った短編は「恋累心中」ですね。「儚い羊たちの祝宴」のような後味の悪さが目立ち、ミステリとしての構成も巧みです。

守屋もちょこっと出てくるよ。

 

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『王とサーカス』

『さよなら妖精』から十年のときを経て、高校生だった太刀洗万智は、異邦でふたたび大事件に遭遇する。絶賛を浴びた『満願』をも超える、現在最注目の著者の最新最高傑作!

引用:『王とサーカス』 – 東京創元社

あらゆるミステリランキングで1位を獲った作品ですね。

ネパールの王室殺人事件を題材にしてますが、複雑なトリックは出てこないので、普段ミステリを読まない人でも読みやすいんじゃないかな。

この物語も太刀洗万智が語り手です。

「真実の10メートル手前」の太刀洗万智は感情移入しにくかったんですよね。

でも「王とサーカス」は1人称で語られるので、太刀洗万智の心情をつぶさに追えて非常に面白かった。

 

*以下、少しネタバレあります

物語内で、ある軍人が「悲劇は娯楽になる」的なことを言う場面があるのですが、それが心をグサリと刺してくるんですよね。

報道における正義とはなんだ!と訴えてきます。

不倫報道、離婚報道とかは昼のワイドショーでよくやってますよね。

当事者にとっては嫌なことなのに、世間の(無自覚の)好奇心を満たすために報道しまくりますよね。

「王とサーカス」はこういう報道の在り方、

向き合い方に鋭く問いかけてきます。

真実をありのままには伝えることは正しいことなのか?記者は何を伝えるべきなのか?
そして、太刀洗万智は自身のジャーナリズムの在り方に対して、どのような答えを出すのか?

それらの答えを探す物語とも言えます。

 

閑話休題(ピヨッピヨッ????)

 

ミステリという形をとって、謎と人の心の暗い部分を明るみに出す、米澤穂信の真骨頂が遺憾なく発揮されています。(病みつきになりますね、やめられない止まらない)

物語のラストでは、衝撃の悲劇が明かされます。しかと最後まで見届けてくださいね。

 

米澤穂信の傑作、「王とサーカス」

あなたはこれを読んでどう思う?

豊かな読書体験をしたければ、この本がおすすめ!

未読であれば、ぜひ読んでください!

 

『満願』

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジック。「日常の謎」の名手が描く、王道的ミステリの新たな傑作誕生!

引用:『満願』 – 新潮社

山本周五郎賞受賞作!

こちらも「王とサーカス」と同じく、多くのミステリランキングで上位を独占した作品ですね。

作風は「儚い羊たちの祝宴」が近い。

6つの短編で構成されます。

どの短編も最後に明かされる事実によって、それまでの物語の解釈の仕方が変わります。

思いもよらぬ動機がもとで、さまざまな事件が起こります。

 

1つ目の短編「夜警」はある警察官の死の真相の裏側を探ります。

本当に栄誉ある死なのか?

死んだ警察官にはなんの意図があったのか?

 

2つ目の短編「死人宿」は温泉宿が舞台で、1つの手紙から推理をします。

自殺しようとしているのは誰なのか。

タイトルの「死人宿」の意味がわかった時、ある怖い真相に辿り着くでしょう。

 

3つ目の短編「柘榴」は母娘と父の物語。女を惑わせる父親が鍵となります。

結末を読んだ時、「女の人怖すぎる!そんな理由で!」と思ったものでした。

怪談のように怖い。

嫉妬とかの気持ちはわからないでもないですがね。

自分よりも優れたものを蹴落としたがるのが人間です。(自分で言っといてなんだけど、偉そうな言い方だなあ)

 

4つ目の短編「万灯」は仕事一筋のビジネスマンの話。この男はある罪の裁きを待っています。

その罪がなんなのかを、回想で明らかになっていきます。

正直ほかの短編と比べると劣ります。

 

5つ目の短編「関守」は不審な事故の取材のために伊豆を訪れたライターの話。

道中おばあさんに根掘り葉掘り、話を聞くのですが……。

6つの短編の中で1番怖かった。「えーん、お母さん怖いよー」って泣きたくなる。

稲川淳二が語ったら、絶対怪談話になると確信できる。

関守は誰なんでしょうかねえ(ニヤリ)

 

6つ目の短編「満願」は殺人の容疑で捕まった女性を弁護する弁護士の話。

女性とは、弁護士が学生の頃の下宿先のおかみさんです。

自分の大切なもののために、あなたは何ができますか?

詳しく紹介はしないのでぜひ読んで、存分に驚いてください。

 

6つの短編で語られた「願い」は「満たされた」のか?

ご自分の目でご確認ください。(ヒュ〜、ドロドロ。……別に怪談集じゃないんだけどね)

優れた短編たちがあなたをお待ちしています。

面白いよ!ぜーひ、読んでー!

 

まとめ

前編、後編にわたって米澤穂信作品を紹介しました。

こちらの都合により、「リカーシブル」、「追想五断章」の紹介は省略させてもらいました。こちらの作品も面白いですよ。

前半はめっちゃふざけてたけど、後半は魅力を語るのに必死でめっちゃ真面目になってしまいました。

あと、拙い文章で分かりにくい文章になっちゃったかなと反省しております。

まだまだ語り足りないので、追記していくことになるかなあ……。

米澤穂信作品を読んだことない方はぜひ気になった作品を読んでね!約束だよ!

最初に読むなら古典部か、さよなら妖精がおすすめ。

ここまで読んでくださりありがとうございました。次回の記事もよろしくお願いします。

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